春らしい日もあれば、朝晩はぐっと冷え込む日も…。寒暖差、気圧差の激しい今の時期は、私たちの体にさまざまな影響をもたらします。
特に注意したいのは、睡眠。
前回に引き続き、パーソナルトレーナーの伊藤晃一先生に、春の睡眠についてお話を伺いました。
第2回目は【血流アップ編】。
現代人だからこそ陥ってしまう、眠りの質を下げる落とし穴に迫り、解決法を紐解いて行きます。
ぜひお役立てください。
疲労バランスの重要性
夜、ぐっすりと眠るためには、肉体が心地よく疲労していることも大切です。ですが現代社会では、昔に比べて肉体疲労が少なく、精神疲労が増していることがほとんど。このバランスの悪さが私たちの睡眠の質を悪くする原因のひとつ、と伊藤先生。
精神疲労は、メンタルが強い弱いということではなく、パソコンやスマートフォンでの作業など脳を酷使することで多くなります。
特にここ数年は、新しい生活様式の中で、体を動かす機会が減っていて、疲労のバランスが悪くなりがち。
私たちの体は、肉体疲労があると休むことを知っていて、ほど良い肉体疲労があることが、睡眠のポイントになります。
「前回、スムーズな入眠と熟睡のためには、就寝時に深部体温が下がることが大切で、そのためには手足に血流が集まっている状態が良いというお話をしました。
精神疲労が大きい人は、頭が酷使されているから、血流が脳に集中してしまいます。頭が冴えて眠れない、というのはまさにこの状態。脳がオーバーヒートしてしまい、眠りたくても休み方がわからなくなってしまっているのです」
一日中デスクワークでほとんど動かない、仕事のことばかりを考えてしまう、という人はまさにこの傾向に。
では、肉体疲労と精神疲労のバランスを整え、入眠時に理想的な血流を得るにはどうしたら良いでしょうか。
運動習慣をもつことが鍵
「肉体疲労と精神疲労の負荷バランスを整えるには、運動習慣をもつことがいちばん」と伊藤先生。さらに「トレーニングすることによって全身の血流が促され、また新しい毛細血管も作られるので手足の細部まで血流がめぐるようにもなります」
ですが、自分に合うものが見つけられない、時間が作れない、運動が苦手、嫌い…という人もなかにはいるかもしれません。
まずは、手軽にできて、心地よいストレッチから始めてみませんか?
良質な睡眠に必要な血流も一気に改善するストレッチを、伊藤先生に教えていただきました。
全身の血流を巡らせる「リカバリーレッグス」
「第二の心臓といわれているふくらはぎを刺激することで全身の血流をアップしていきます。前屈のポーズで頭を下げるので、上半身の血流促進にも有効です」
立った状態で前屈をし、足踏みをします。イラストのようにハーフサイズのストレッチポールを足の下に置くとさらに負荷がかかって効果がアップ。1分半ほど続けます。
もし体が硬くてつらいという人は、イラストのように椅子に手をついて行いましょう。
「デスクワークの合間や、お風呂のあとや夜眠る前に、ぜひ実践してください。全身に血が巡り、眠りやすくなります」
体がポカポカになる「サイド to サイド」
「腰、足裏、内ももをのばしながら、大動脈などの大きな血管が走っている腹部を刺激し、全身の血流を促します。むくみや歪みの解消にも効果的です」
床に両脚を開いて立って前屈をし、両手を中央につく。その状態で腰を左右にゆらしましょう。腰回り、足裏、ふくらはぎなどの伸びを感じながら1分半ほど続けます。余裕がある人はイラストのように両足の下にハーフサイズのストレッチポールを置くと、脚裏がさらに伸びます。横に突き出した方の腕を上げて、天井をのぞき込むように上体をねじると運動効果もアップ。
「おなかまわりを気にしている人が多いと思いますが、脂肪だけでなく、むくんでいることがほとんど。このストレッチをすることで、すっきりしてくる効果も期待できます」
このふたつのエクササイズは、運動前の準備運動にもおすすめです。
まとめ
2回に渡って「春の睡眠」についてお届けしましたが、いかがだったでしょうか。
最後に伊藤先生より、寝つきが悪い日のアドバイスをいただきました。
「眠れない夜は、呼吸が浅く早くなっている可能性があります。浅い呼吸は血流を妨げるだけでなく、交感神経を優位にさせ、体をさらに眠りにくい状態にしてしまいます。そんなときは、深くゆっくりとした腹式呼吸を心がけてみましょう。肋骨の下辺りの筋肉が硬くなっていて深い呼吸ができない方も多いので、指先で少しほぐしてみてください。深いリラックス効果で副交感神経が優位になり、体が眠りモードに導かれるはずです」
ぜひ取り入れて、毎日充実した睡眠を得てください。
伊藤晃一さん
モデル、舞台俳優をしながら、パーソナルトレーナーとしても活動。30歳のときにNYに渡り、パーソナルトレーナーとしての経験を深めると共に俳優学校にも在籍。帰国後、運動だけでは健康になれないという思いから、「回復」「正しい体の取り扱い」「運動」「食事」「睡眠」「サプリメント」の指導を一人一人に合わせて行うため、活動の拠点をスポーツクラブからスタジオCarpeDiem(カルペディエム)へ。2014年からはSPICとの活動もスタート。Body Engineer認定パーソナルトレーナーのほかKAATSU JAPAN認定加圧トレーニングインストラクター取得、BODY CODE SYSTEM認定ピラティス、日本ファスティングコンシェルジュ協会認定シニアファスティングコンシェルジュ(SFC)など、数多くの資格を取得。