
フルーツを食べる人 vol.4 ザクロ
SUMMARY
- ・燃えるような赤い色のザクロ
- ・スペインでの呼び名は?
- ・固い皮に守られた赤い宝石
特集記事としてお送りしている”フルーツを食べる人”。
好評のため今回で4回目の連載となりました。
今回は、ヨーロッパで長年重宝されてきたフルーツ、ザクロを取り上げます。
綺麗な赤い色で、火の玉や彗星のような形をした果実、ザクロ。
原産地はトルコ・イランから北インド山地、或いはカルタゴなどの北アフリカといわれており、5000年以上前から栽培されるなど、ヨーロッパの人々には古くから親しまれてきた。
旧約聖書にも登場しており、 良い土地に実るフルーツの象徴の一つとして挙げられている。
「あなたの神、主の戒めを守り、主の道を歩み、彼を畏れなさい。主はあなたを良い土地に導き入れようとしておられる。それは、平野にも山にも川が流れ、泉が湧き、地下水が溢れる土地、小麦、大麦、ぶどう、いちじく、ザクロが実る土地、オリーブの木と蜜のある土地である。」(申命記8章6節~8節より)
一方、スペインではザクロは「グラナダ」と呼ばれ、代表的都市の名前にもなるほどポピュラーで、特にアンダルシア地方ではザクロの木があちこちに見られる。
県都グラナダには、お店の看板や街灯、石畳までいたるところにザクロの模様が描かれており、中心地であるヌエバ広場から世界遺産で有名なアルハンブラ宮殿に向かう途中には、門の上に3つのザクロが彫刻されたグラナダ門がある。
なぜ、ここまでザクロが街のシンボルとして描かれているのか?
8世紀から11世紀にかけイベリア半島は、アフリカから来たイスラム教徒により征服された。しかし、キリスト教国のレコンキスタという国土回復運動により徐々にその勢力範囲は狭まっていく。その最後の砦となったのが、幾重もの城壁に囲まれ難攻不落を誇ったグラナダ王国だ。
終いにはキリスト教国がこれをこじ開け、レコンキスタは終焉を迎えるのだが、そのシンボルとして、固い皮が剥かれ中身が見える形でザクロが描かれているのだ。
そんな固いザクロの皮も、熟すと自然に割れる。そして、中には、より鮮やかな美しい赤色の宝石のような粒がたくさん詰まっており、古代より豊かさと命の象徴とされてきた。
ザクロに多く含まれる成分として、その実を赤く染める色素の「アントシアニン」やタンニンは抗酸化作用で、エラジタンニンやエラグ酸は抗糖化作用で、美肌作りはもちろんエイジングケアにもよい。
他には、カリウムは水分を排出する利尿作用でむくみの解消につながるといわれる。クエン酸はカルシウムの吸収を助け、骨を丈夫にする働きがある。
このように美容や健康によい果実として「女性の果実」とも呼ばれる。その栄養価の高さから、世界三大美女のクレオパトラや楊貴妃も好んで食べていたという逸話もある。
こうしたヨーロッパの歴史の浪漫に思いを馳せながら、栄養満点の赤い宝石が詰まったザクロを一剥きしてはいかがだろうか?
【編集後記】
日本では、庭木や盆栽として観賞用のものが栽培されることが多く、実が生っても酸っぱくて食べるには不向きです。しかし、市場に流通しているものはアメリカ・カリフォルニア産又はイラン産のもので、甘くて良い風味があります。
果実以外にもジュースやシロップ、ザクロ酢など飲み物としても流通しているので、冬の美容と健康の一助として食してみてはいかがでしょうか。